第1章

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 俺はあまり代謝がいいほうではない。汗も言うほどかかないのはいいとして、冷え性だったりする。体がそう言うのに慣れてしまってるせいか、冬場なんかはキンキンに冷えて、もげそうな痛みを感じるまで自分が冷えている事に気付かなかったり。  こうなってしまうと今度は温めるのにすごく時間がかかるんだ。サウナに入って基礎代謝を上げた方がいいのかもしれない。  サウナに入ると新田さんと部長がなにやら難しそうに眉をしかめ並んで座っていた。何か深刻な話でもしてるのか? と思ったけど、なんてことはない。ただの我慢比べをしていただけだった。  早々に息苦しくなって、サウナを出ようとすると「根性が足りないぞ佐伯」と部長が喝を入れてきた。その横で新田さんが目を血走らせ「はっはっは」と、豪快に笑いながら更にサウナの温度を上げるべく岩に水をかける。  やばい。付き合ってらんないよ。  俺は温泉を満喫するべく入っただけだもの。基礎代謝の方はもういいや。俺は部長に「ファイトです」とニッコリ笑顔でエールを送り、早々にサウナから逃げ出した。  水を体に引っ掛けてクールダウンしていると「佐伯さーん」と俺を呼ぶ少し高い声。水風呂で小西君がブンブンと手を振っていた。 「気持ちいいすよぉー。一緒に入りましょー」  さっきも言ったように、小西君は身長はともあれ俺が言うのもなんだけど、声が少し高めだ。口調も若干幼さを残してる。  温泉に来て、サウナに入ってもいないのに水風呂。 ……子供だな。  無邪気にニコニコする小西君に目線でサウナへ促し、ツンケンと言ってやる。 「小西、男なら行ってこい?」 「う!」っと静かになった小西君に、フッと笑うと照れくさそうにしていた。  可愛いやつめ。  露天の岩風呂はとっても気持ちよくて、俺は肌に染み込む様な柔らかなお湯とひんやりとした外気を楽しんだ。寝湯も気に入っちゃって、岩風呂と寝湯の往復コースで温泉を満喫。 すっかりぽかぽかになったどころか、暑いくらいだ。これで俺もちょっとは代謝も良くなったんじゃないのかな?   浴衣を着て、休憩スペースで水を飲みながら時計を見た。食事の時間まではまだ二時間程ある。  散歩にでも出てみようかな。  俺はそのままオススメだって言う遊歩道へと向かった。
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