第1章

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 旅館から出て村とは反対側の山の方へなだらかな道が作ってある。ご丁寧に『遊歩道はこちら』の看板。その道を登った。真新しい上り坂の木の階段がジグザグと木々の間に通路をつくっている。  色付く紅葉を楽しみながら、ゆっくり歩く分には、なだらかな上りの階段は全然きつさを感じなかった。  しばらく行くと、またまた手作りの小さな看板があって、その下に『湖の展望台まで 一km』と書いてあった。  一キロ頑張ったら山の展望台から湖を眺める事ができるんだろうけど……。  今の時間から往復二キロはキツイし、帰り道が真っ暗になるのも怖い。鑑賞スポットに無事辿り着いても、もう日が暮れて湖が見えませんでした。って可能性は充分にある。  ということで、左の『湖の展望台まで 一km』の看板とは逆の右の看板。『東屋』と書いてある方へ進んでみる。  こっちは若干下り坂。  しばらくすると川のせせらぎが聴こえてきた。  小さな屋根と、人影、丸太で作られた柵が見える。柵の向こうに川があるのかな? どうやら遊歩道はここまでみたいだ。  作られたばかりという感じの真新しい休憩所。屋根の下にはこれまた手作り感あふれる大きな木製の丸いテーブルと、座るのに丁度いい高さに切った丸太が五つ、ドンドンドンと並んでいる。  そこに自分と同じ浴衣を着た先客が居た。
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