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向い合って話してた二人は、僕に気づくともの凄い勢いでこちらを見た。
漫画だったら『ビュン!!』って効果音が付きそうなほどの素早さで。
「あ、あら、おはよう。そこにいたの。いつから?」
真美さんの顔が少し引き攣って見える。
隣のマスターは、思いっきり固まっている。
やっぱり聞かれたくない話だったんだな?
「植木鉢に水やりしてたんですけど、考え事してたのでお二人が入ってきたことに気づきませんでした」
「そ、それはまた、随分集中してたのね」
「はい、すみません」
「あらぁ、謝ることなんてないのよぉ」
明らかにホッとした顔の真美さんが、甘ったるく語尾を伸ばして言う。
そしてマスターの口から堪え切れない安堵の吐息が漏れた。
嘘も方便、と僕は心のなかで繰り返す。
「昨夜はよく眠れた? こいつのイビキ、うるさくなかった?」
「いえ、そんなことないです! 僕の方こそ、もしかして寝相が悪くてマスターよく眠れなかったんじゃないかと。すみません」
「気にしないの。こいつね、前は別の場所にマンション借りて夫婦で住んでたんだけど、嫁に逃げられてから上の空き部屋に越してきたのよ。だから家具も揃ってなくて、ごめんなさいね」
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