KISUMI

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やっぱり寝不足なのだろうか。 「あなた自身はどうしたいの? とりあえず警察に行く? それとも、先に病院で診てもらいたい?」 「どっちって言われても……。どうすればいいと思いますか?」 「自分のことなんだから、そこはあなたが考えて決めなくちゃ。私の意見なんか聞いてどうするの」 好意に甘えてひと晩泊めてもらっただけでも随分迷惑かけてるんだから、これ以上甘えるなと言われた気がした。 なじるような口調ではなかったけれど、ピシャリと言い切られて返す言葉がない。 正論だ。 自分のことなんだから、自分で考えて行動するのは当然のこと。 ただ僕は、こういうことに慣れてない気がした。 いつも誰かのお膳立ての通り、言われた通りにしていたような気が。 ただの錯覚かも知れないけれど。 「どこへ行くか決めたら、ちゃんとついてってあげるわよ。建物の前まで送って『はい、さようなら』なんて薄情なことはしないから安心なさい。あなたのために言ってるのよ。力にならないとは言ってない」 心の裡を見透かされたようですこぶる居心地が悪い。 親切心を疑ったわけじゃないんだけど、自分の立ち位置があまりに不安定すぎて対等なものの考え方ができない。 無論、実際に対等の立場に立ってるわけじゃないんだから、当然と言えば当然だけど。
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