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「おい葵、おまえ、それ」
「あ、僕の服、全部洗濯してて。奏介さん、ごめんなさい、勝手に借りちゃった」
「いや、それは構わない。構わないが」
微妙な表情で奏介さんが、ぎこちなく隣の真美さんを伺う。
真美さんは驚いた表情のままで固まっている。
あれ、何かまた僕やらかしたかな。
洗濯してて着る服がないから、と言えば何とか誤魔化せるかと思ったんだけど。
「あの、奏介さん。ごめんなさい」
奏介さんは大きな手で顔を覆い、指の隙間から僕を見てやれやれと言いたそうに苦笑した。
「まぁ、おまえらしいと言えばおまえらしいか」
手招きをされたのでおずおずと近づくと、絶句していた真美さんがいきなり爛々と目を輝かせて大きな声で僕の名を呼んだ。
「ねぇ! あっちゃん!」
「は、はい!」
「はい、じゃないわよ、もうやだ、やだやだ、何それ! 彼シャツ? しかも萌え袖? あっちゃんてば、そういう属性だったの?!」
萌え……何?
属性?
真美さんの言うことは時々少しわからない。
わからないと言えば、嫌だという割に何でこんなに嬉しそうにしてるのかもよくわからない。
「ん~~~~、可愛いっ!」
叫ぶ否や、真美さんはあっと思う間もなく僕に抱き着いてきた。
柔らかい胸に顔を押し付けられて、く、苦しい、息ができない。
「こ、こら、離せ!」
奏介さんが強引に引きはがしてくれなかったら危ないところだった。
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