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「では真琴君、向こうに行く準備をしなさい。行先は辺境AS空域の惑星アスだ。」
「はーい。」
真琴はそう元気に答え、目的地に行く準備をするために自室へと戻って行った。
廊下を元気に走って行くその背中を、司令室で視界から消えるまで見送っている局長とロイド。
「う~ん、相変わらず元気のいい少年だ。」
「あ~、廊下は走っちゃいかんと何度も言ったろうが。」
まるで自分も子供のように、楽しそうな笑みを浮かべる局長と、まるで彼のお母さんのように、本気で真琴を心配するロイド。
「良いじゃないかロイド君、あの位の子どもは走り回ってて然るべきだ」
「そんな事云って転んだらどうするんだ!ああほら危ない!」
「ちょっと滑っただけじゃないか。あれくらいで騒がしいぞ」
「何を言ってるんだ!怪我でもしたらどうする!」
「一々喧しいぞ。君は此間からまるで真琴君のお母さんじゃないか」
「局長がそんなことを言ってるからあいつがすっとこどっこいになるんだろうが!」
機嫌よさそうにニコニコ笑う局長と、心配し過ぎてキレる寸前のロイド。
・・・一口に見守ると云っても色々有るが、この二人はまるでえらくお転婆ではねっかえりな娘を持った夫婦のようだ。
「そもそも局長、助っ人ってまたあいつを呼ぶんだろうが!」
「そうだよ悪いか?」
「悪いに決まってんだろう!あの野郎が何かしたらどうするんだ!」
あの野郎が真琴を無事で返すわけがない。ロイドは柄にもなく本気で心配しているようだ。
ますます不愉快そうな顔をするロイドに、局長はさらりと言った。
「何かって何だね。そもそも何のために君が行くと思っているんだ」
「・・・・え、何だって??」
一瞬何を言われたか判らず、ロイドは怪訝そうな顔で聞き返した。
局長はそれに答えるでもなく、モニターの方に体を向け、のんびりした口調で言う。
「君が〈あの野郎〉と呼ぶ彼は、確かにある意味不届き者ではあるが、彼は彼で思う処もあるようだ。
その面から言えば、向こうへ行くまでの道中で、彼が真琴君に何かする可能性は低いともいえる。だからそのあたりは気にしなくても良いだろう」
「でもなぁ」ロイドが少し怒ったような口調で抗議すると、局長はまた同じ調子で続ける。
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