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「さーて」
上でロイドと局長がほぼ喧嘩のような事になっているとは知りもせず、真琴は自室で出発の用意をしていた。
「えーと、目的地はプレアデス領の辺境AS空域、ラウム星系の第四惑星アス、ベクトルはw33421565、と。NRCと、兼エネルギー供給装置も必要だな。あと持ってく物は―――」
そう独りごとを言いながら真琴は自分の緑色のリュックサックにあれこれと荷物を詰め込み始めた。
ちなみに、NRCと兼エネルギー供給装置と云うのは―――
宇宙での旅は一秒間で地球を七周する光の速さでも百年、二百年とかかったりする事が多く、場所と場合によっては一万年二万年、なんてこともある。
あまりに長い時間がかかり過ぎるので、途中で搭乗者の気がふれたり、宇宙船の主要駆動系統がイカレたりしてしまう。
そのため開拓時代初期には、目的地に着く前に宇宙船そのものが空中分解したり、無事に着いても乗組員の一人が大暴れして他の搭乗者を皆殺しにしたりなどと云った事態が後を絶たなかった。
それを防ぐために開発されたのがNRCと兼エネルギー供給装置だ。
まずNRCを特殊な方法で体内に内蔵し、船に兼エネルギー供給装置を仕込んでおく。
すると宇宙船に乗った時点でそれが起動し、NRCが宇宙船が進んで行くと同時に体内時間や機械の体感時間を緩やかに遅らせていき、兼エネルギー供給装置が船と搭乗者の両方に半永久的にエネルギーを供給してくれる。
そのためどんなに遠い星へ行ってもNRCと供給装置の能力によって、船のエネルギーが切れる事も、搭乗者が年老いたり若返ったりすることもなく地球と同じ体感時間で目的地に着く事が出来る、真に便利な長期宇宙旅行の必需品だ。
「よしっ!で―きた―!」
わたしが訳の分からん物の説明してる間に、主人公は荷物をまとめ終わったようだ。
・・・と言うか、それ全部持ってくの?
「うん。全部必要な物だよ」そう真顔で答える真琴の鞄には―――
救急箱、ロープ、お菓子、缶切と大小様々な金属製の缶、孔雀の立体パズル、着替え、それに散弾銃にガトリング砲、パラライザ―・ガン。
・・・って、お前はプレアデスと何する気だ!
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