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淡く水色に光る宇宙船のタ―ミナル。そこでロイドと真琴は二人の異質な者と出くわした。
ひとりは黒ずくめの、背の高い男だった。黒い細身のスラックスに黒いダブル合わせの膝まであるロングコートを羽織り、手には黒い戦闘用グローブを嵌めている。
歳は恐らくロイドよりも若い。少々癖のある黒髪を、肩まで伸ばしている。
黒いテンガロン・ハットを目深に被り、UVカット仕様と思しき色の濃いサングラスをかけているので顔立ちや表情は全く分からない。
きりっと引き締まった、それでいて少し楽しそうな笑みを浮かべた口元が余裕を見せていて、結構強そうだ。
その黒ずくめの後ろから出て来たもう一人は、真琴と同じ位の年頃の少年だった。着ている軍服からコルトア公国軍の尉官の一人であることが分かる。
そして少年の顔を見たとき、真琴は驚き、声を上げた。
「あれっ?リコ中尉?」
人形のように整い、どこか虚無的にも見える顔立ちに、水色の光の中で透き通る水色の髪。そして宝石のようなきらめきを放つ薄青の双眸。
それは、局長がついさっき銀河帝国に連れ去られた、と云う風に言っていたリコ・フラウ中尉だった。
いや、同じ顔の別人ということもある。それとも、本当にリコ中尉なのだろうか。真琴がつい、少年の顔に見入っていると、隣のロイドと少年の隣の黒い男が同時に注意する。
「あほう、リコ中尉がこんな所にいる訳がないだろう」
「何見てんだよコラ。ああ?」
呆れたように言うロイドと、完全にどやかす口調の黒い男。
そして、件のリコ中尉と全く同じ顔で、無表情に佇む少年。
・・・しかし、これで別人だとすると、一体この少年はどこの誰だろう。
そして、異質な気配を放ち異形のオーラを纏いながら、不敵に微笑みを浮かべるこの男は一体誰なんだろう。
そしてこの男の周囲にそこはかとなく漂う、まるで何千、何万、何億もの命や魂が蠢いているような、この感覚は何なんだろう。
そして、そんな気配を纏っているのに、自分は何でこの人の波長を怖いと思わないんだろうか。
その、何だか良く解らない感覚をもう少しはっきり掴もうとしてその黒い男の方に意識を集中させていると、男は楽しそうに笑う。
それと同時に頭の中にこんな言葉が浮かんで消えた。
《ほう》
《君は、私の気配が読めるのか・・・》
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