♯01

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   少し驚いた子供のようなその声を聞き、真琴は少し不思議に思ったが、正直に《読めるよ》と答えた。  すると、男はまた子供のような笑顔になり、真琴にまた思念を送ってきた。  《君は、他人の気配や波長を読むのが得意なんだね》  《うん。目の前にいる相手のおでこ辺りを見てると読めるんだ。》  《そうか。―で私は?》  《何だかよく分かんないゴニョゴニョしたのがみっちりしてる》  真琴は素直に、感じたままを答えた。すると男は苦笑し、真琴はロイドに頭をはたかれた。  「痛いがな!何すんですか大佐」  小声で抗議すると、ロイドに小声で叱られた。  「馬鹿野郎何正直に答えてんだ」  それを聞いた真琴は、しまった、と思い、気分を害していないか、と男の方を見た。  こういう能力を持つことは、今の時代そんなに珍しくはない。  勿論能力者そのものはそんなに多くは無く、百人に一人いるかいないかという程度だが、二十三世紀中盤に〈能力〉の事が科学的に証明され、更に〈能力〉の開発方法が解明されたからだ。  なので〈能力者〉達は中世頃ほど疎外されたり、二十一世紀頃のように新興宗教の教祖のような扱いは受けず、今は逆に幾つかの特権を得て、なんとか〈平凡な一市民〉として暮らしていけている。  しかし、そうした能力で、相手の〈何か〉を見てしまった場合。  例えば過去、未来、思惑と言ったものや、性格とは別のその人の本性など、下手すると向こうがこちらをどう思っているか――  そんな事まで読んでしまう場合、そして相手が初対面の場合は(いや親友が相手でも同じか)そのことを面と向かって言うのはとても失礼である。  なのに真琴が馬鹿正直にゴニョゴニョがどうの、等と言ってしまい、その為に彼が怒ったりしてはいないか――とまあ、ロイドが真琴を怒鳴りつけたのはこういう訳であった。
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