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脇に抱えたままだった赤のクリアファイルはシンクに置き、8人分のお茶の用意をして会議室に向かった。 商品の販売方法について乱暴な口調で語り合うウチの販促課と取引先相手。 雲行きが怪しい雰囲気の打ち合わせは、お茶だしをする時も凄く神経を使う。 話の邪魔にならないように全員分を出し終えた後、逃げるようにして会議室を出た。 「あーゆー雰囲気って苦手…でもいつか体験しなくちゃいけないんだよね」 雰囲気に呑まれて自然と息を止めていたのか、会議室を出た途端大きく息をはいた。 でもこれで吉沢さんのところへ資料を届けに行ける。 駆け足でフロアに戻り、吉沢さんのデスクへと向かった。 「すみません、お待たせしましたっ!」 「あぁ、いいって。今、あそこ嫌ーな空気だったろ。大丈夫か?」 どうやら吉沢さんは会議室で起きている険悪な打ち合わせの内容を把握していたみたい。 本当、何でも知ってるな、この人。
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