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「あの、これです。さっき渡そうとしていたベースの資料」
「あぁ、ありがとう。助かった…」
何枚もある資料の中から吉沢さんへと渡す資料を探し出して渡した時、奥の会議室からここまで響き渡るような扉を開ける音が鳴り、社員一同は一斉にそちらへと視線を向けた。
「こんなろくでもない企画しか出せないような会社とはもう付き合いきれん!こちらの要望も聞いてもらえないような企画会社ならこっちから願い下げだ!」
廊下に響く声は、さっきお茶だしに行った時に一際乱暴に言葉を放っていた、一番偉そうで少し髪の毛が寂しい男性だ。
私と吉沢さんは顔を見合わせ、吉沢さんは苦い顔をしていた。
「あーあ、また始まった。いつもあぁなんだよ。あの調子で我儘を言って無理難題を押し付けてくるんだ」
はぁっとため息をつく吉沢さんを残して、私は興味本位で人が集まっているフロアの扉へと足を進めた。
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