初恋の香り2

6

「はい。全部拾っておいたから」

渡してくれたのは、私がさっき築島さんとぶつかって落としてしまったクリアファイルだ。
プレゼンの大事な資料が入っている大切なファイル…よかった…無事で。

「ありがとうございます……」

「いいのよ。覚える事がたくさんあって大変だと思うけれど頑張ってね。
じゃ、私、秘書課の室長に呼ばれているからもう行くわね」

そう言ってエレベーターへと去って行った築島さん。
少しだけいつもとは違う疲れた表情をしていたように見えたのは気のせいかな…

「あっ、私も戻らなくちゃっ！」

享楽商店の山下部長さんにちゃんと資料を渡せた事を報告するために、私ももう一つのエレベーターに乗り込んだ。
一仕事を終えた私にその先輩は大変喜んでくれて、
「やっぱり御坂さんに行ってもらって正解だったよ」
とは言ってくれたけれど、内心はとても複雑だ。