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「…どうしました?」 今の私は様子を伺う必要もないくらい、挙動不審だったと思う。 今にも泣き出しそうになりながらも、柊さんにこの状況を伝えた。 「な、なくしちゃって…私…」 「なくした?何をですか?」 「……USB…を。こ、今度のプレゼンで使う…モニターアンケートのデータやそのベースとなる資料も全部入ったUSBを…わ、私……」 「なっ……」 柊さんの声が朝の穏やかな声から一瞬で怒りに変わったのがわかった。 目をギュッと瞑って涙を堪えるけれど、今私がするべき事は泣くことじゃない。 なくしてしまったUSBを探し出さなきゃいけないことだ。 「…どこでなくしたのかわからないのですか?」 「い、今、必死に思い出していてところで…」 柊さんは何かを言おうとしていたけれど、荒いため息と共にその言葉を聞くことはなかった。 それでも充分に怒っているということは乱暴に置かれた鞄の音でわかる。
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