7

18/26
前へ
/434ページ
次へ
築島さんはそのベンチに座り、私にも座るように勧めてくれた。 でも私は首を横に振り、背中に日光の温かい光を浴びて築島さんの前に立った。 「お話が終わったらすぐに帰りますので、立ったままで結構です」 「そう…じゃあ、そんなに怖い顔をしてまで言おうとしているお話を聞こうかしら」 クスッと笑うその顔は余裕がたっぷりだ。私は歯を噛み締め、そして口を開いた。 「昨日の事なんです。昨日、私午後に築島さんとエレベーター前でぶつかりましたよね?」 「…昨日…えぇ、そうね。私は秘書課の室長に呼ばれてエレベーターに乗ろうとしたらあなたが飛び出してきて…」 「それは…申し訳ありません。ぶつかった事は謝ります」 「やだ、もしかして大事な話ってそれ?わざわざ謝りにきたの?」 口を抑えて笑うその仕草は上品でとても可愛らしい。 でも、その顔を歪ませるそんな言葉を私はこれから言わなくちゃいけない。
/434ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5014人が本棚に入れています
本棚に追加