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この雰囲気に呑まれちゃ駄目だ。 一歩踏み出して私は築島さんに詰め寄った。 「あの時、何か拾いませんでしたか?」 「何かって?」 「資料の他に、何か……」 「さぁ、何かあったかしら」 「あったんです」 「知らないわ」 まるで彼女も私にこう言われるのを予想していたかのように、テンポよく会話は続いた。 それに加えて微動だに動かない瞳。自分は何も知らない、関係ないって言われているみたい。 でも、この人以外私のUSBもパソコンの大切なデータも消した人は考えられない。 私はさらに詰め寄ってこう言った。 「あのクリアファイルの中には、USBが入っていたんです。そして私は築島さんが私のUSBを拾ってくれた所をこの目で見ました」 言い終えると、微かに揺らいだ築島さんの瞳。 私の問いかけに答える言葉はまだ出てこない。
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