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築島さんは、私に振り払われた右手を左手で大袈裟に擦りながらここから立ち去ろうとする。 ここで帰られては絶対にUSBは戻って来ない…!そう思い、横切る彼女の肩を掴んだ。 「ま、待って下さい!まだ肝心のUSBを返してもらってません!!」 「きゃっ!何をするの?!御坂さん、離して!」 私の声より一際大きく叫んだ築島さんの声は、遮る物が幾つかの緑しかないこの場所には簡単に響いた。 私達より少し向こう側にいた社員達にもこの声は聞こえて、様子を伺われている事がわかる。 焦った私は肩から手を離してしまった。 「……余裕がない気持ちもわかるけれど、時には冷静になることも必要よ。 今のあなたがしなくちゃいけない事はプレゼンデータの作り直しでしょう? 何にも力になれないのが残念だけど、間に合うように応援してるわ。頑張ってね」 フッと笑い、私に背を向けて歩いて行く彼女の背中を、私はただ見送る事しか出来なかった。
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