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盛大なため息が勝手に漏れた。 高校を卒業して以来、全く顔を合わすことがなく時が過ぎ、この社に入社した時に受付にいた事には驚いた。 俺の反応とは異なり、築島は俺の存在は知らない素振りをし、他人を気取っていた事にも。 高校時代はあれだけ俺に執着していたのに薄情な人間だと感じたが、築島が大学に入った途端全く連絡がなくなり、たまに聞く話は将来有望な学生を友人の女から横取りしたなどの下らない噂ばかりを聞いていた事を思い出せば、納得の反応だ。 たとえほんの数ヶ月でも共に過ごした女がそんなものだったと知った時はそれなりに傷もついたが、清々したと同時に女とはつまらない生き物だとも知った。 でも、琴は違う。 研修で再会した時に瞬時に感じた。 この子だけはあの時の…初めて逢った時と変わらない、あの頃そのままだと。
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