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それでも思いのほか頑固なところがあったり、負けず嫌いだったり、努力家だったり…っと意外な一面を魅せられて、ますます自分が彼女に溺れていく様が手に取るようにわかる。 でも、だからこそもう傷がつかないように守ってあげなくては。 上司として、一人の男としても。 俯きがちになっていた顔を上げ、なるべく足音を鳴らさないように、だけど足早に歩く。 中庭に続く廊下を曲がろうとした時、ガラス張りの窓から中庭の様子がここからでも見えた。 その先には琴の横を通り過ぎる築島とその肩を掴んだがすぐに離した琴の姿。 あの様子ではやはり上手く進まなかったのだと、すぐにわかった。 そして何かを築島に言われ、悔しそうに佇んでいる彼女の姿を見て、驚くほど静かな怒りが込み上がってくる冷静な自分が、築島の姿を目線でずっと追っている。
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