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自身の髪を触っていた手を胸に前で組み、斜め下に視線を逸らす築島は珍しく口篭もっている。 おそらくこの予想は当たっているのだろう。 まさか誰かに見られていて、それが俺達にまで伝わるなどとは到底思っていなかったに違いない。 「これでも何か反論があるのならばどうぞ」 余裕を見せるため笑みの一つでも見せればいいが、生憎そこまで人間は出来ていない。 築島にはこれから言葉で攻め立て、感情を困惑させて、どこにもいられなくなるまで追い込んで、ここの居場所をなくしてしまえばいい。 彼女を泣かせ、心に傷を負わせた罪は重い。 まるで醜いものを見るような冷たい瞳で築島を見据えるが、まだ軽く笑う余裕は築島にはあったようで、髪をかきあげながら挑発的な目を向けられた。
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