初恋の香り2

8

「頭のいい柊君なら、どうするのが一番いい選択なのかわかっているわよね」

見飽きた笑顔でゆっくり言葉を並べ、俺の腕を触れる程度に触りながら横を通り過ぎる築島。
そして去り際に

「久しぶりにご飯でも作って待っているわ」

っと、言葉を残して行った。

窓ガラスを叩き割りたくなるほどの感情に駆られ、怒りばかりが湧き上がってくる。
後ろから鳴り響く靴音が耳障りで、俺はその場を舌打ちをして歩き出す。

向かうはこのまま真っ直ぐ行った場所にある非常階段。
築島に渡された紙は乱暴にジャケットのポケットに入れ、思い浮かぶのは一人で泣いているだろう彼女の顔だ。

非常階段に向かったということは、階段で座り込んでいるのかもしれない。
休憩の時間も考えて駆け上がらなければいけないなっと思っていたが、琴は扉を開けたすぐ前で崩れるように座り込んでいた。