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琴は全然冷静なんかじゃない。
この時、そう理解した。
そして俺の胸に顔を埋めながら肩を震わせ、本音を洩らす。
「ひっ…く……く、悔しい……悔し…です。
私…頑張ったもの……全部、うぅ…なくな…っちゃって……
この、仕事も向いてないって……
悔し……い……」
その後はもう何も語らず、嗚咽しか聞こえてこなかった。
こんなに悲しみの感情をむき出しにする琴を見るのは初めてかもしれない。
全身が震え、悔しさを露わにして小さく丸まっている彼女を思い切り抱きしめた。
胸の奥が沸々と熱くなり、止まらない。
こんなに相手に怒りを感じたのは、今まで希薄な人間関係ばかりだった俺にとって初めての事だった。
幼い子を宥めるように頭を優しく撫で、彼女と自分の心を落ち着かせた。
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