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額に口付けをして、琴の顔を覗きこんだ。 そして優しく安心させるように告げる。 「大丈夫だ。俺に任せろ」 「…柊さん…」 「大丈夫だから。琴は何も心配しなくていい」 こんなに柔らかく微笑む事が出来たのは、彼女を挫折の深みから救ってあげたい気持ちが大きかったからだろうか。 感情は怒りでむき出しなのに、どこか冷静になった自分がいる。 琴の為なら感情さえも押し殺す事が出来ると、この時わかった瞬間だった。 俺の笑みを見た琴は安心したのか涙は止まり、不思議な顔をしていた。 経緯を知りたがる琴に俺はどうしても築島の家に行く事は言えなくて、午後の業務後、今度は俺が受付に足を運び、築島に会いに行くと話した。 それを聞いた琴は複雑な顔をしていたが、俺に任せるしかないと理解してくれ、渋々頷いてくれた。
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