9

2/23
前へ
/434ページ
次へ
「…………ここか」 住所を記憶した時から薄々と感じていたが、築島が住んでいるマンションは俺が住んでいるマンションからさほど遠くない位置だった。 駅にすれば二つ離れているくらいだ。 これが電車通勤をしていたのなら毎日のように顔を合わせていたのかもしれない。 自分が車通勤であった事に心底安堵した。 車を近くのコインパーキングに停めてマンションのアーチを潜り抜け、オートロックの為、6階建ての最上階に住んでいる築島の部屋番号を押してインターフォンを鳴らす。 しばらくすると、浮かれた築島の声が聞こえてきた。 『いらっしゃい。今、開けるわね」 その声に何も反応もせず、ただ流した。 そしてエントランスが解除される音が鳴り、深いため息と共に俺は重い足取りで最上階の部屋へと向かう。
/434ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5014人が本棚に入れています
本棚に追加