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「……そんなに怒るほど、あの子が大事なの?」 小声過ぎて聞こえ辛かったが、間違いなく築島はそう言った。 俺を見上げたその顔は、悲しんでいた顔とは全く別人の愉快そうに笑う女の顔がそこにはあった。 「だったら、ある条件を受けてくれたら返してあげる」 「条件?」 「ふふっ、そう。大丈夫よ、私達の間なら全然難しくない事だから」 築島が動くたびに香ってくる風呂上りの匂いに、吐き気が込みあがってくる。 もう片方に持っていた鞄を通路に落とし、両手を使って突き放した。 「もう、痛いわ」 「……条件などくだらない。こちらが受ける理由なんかありません」 「そんな事言わないで。ほら、返してほしくないの?これ」 そう言いながら築島がワンピースの太もも辺りのポケットから取り出したのは、見慣れたUSBと初めて見るメモリースティックだった。 多分、あのメモリースティックにプレゼン関連のデータをコピーして持ち出したのだろう。
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