9

9/23
前へ
/434ページ
次へ
「じゃあ、なぜ柊君はここまで来たの?一体どういうつもり?」 まだ築島は余裕があるのだろう。俺のネクタイを指でなぞりながら見上げるその姿から視線を逸らしながら、なぞられている手を左手で払いのけた。 「それは今まで一人我慢をして頑張って来た彼女の為です。あなたから傷つけられ、今も苦痛に耐えているあの子の為に。 でも、この行動がこれ以上彼女を傷つけるようなものであるなら、何もいりません。もう帰らせて頂きます」 「……彼女、仕事辞めちゃうかも」 「それをさせないのが私の役目ですし、彼女も自分の仕事に誇りをもっている優秀な社員です。説得すれば、必ず残ってくれると信じています」 言い返す言葉を持たない築島は悔しいのか、唇を噛み締めて黙ったままだ。
/434ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5014人が本棚に入れています
本棚に追加