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お互い黙ったまま、生温い夜風が知らずに熱くなっていた身体にあたり、髪がなびく。 でも、そんなものでこの熱は冷める事はない。 それは築島も同じだったようで、恥を感じているのかその肌色は少しずつ赤くなり始めていた。 そして、初めて見せる睨んだ目つきで俺を見た。 「本当……柊君って昔からそう……可愛くない。 全然私の思うようにならない人なんだから……」 後ずさりしていく足はもう廊下ではなく、自身の部屋の玄関まで下がっている。 一定の距離を保てた俺はあの匂いから解放され、安堵のため息をついた。 「あなたこそ昔から全く変わりませんね。人を蹴落として快感を覚えるという愚かなままだ」 「そんな私にご執心だったのはどこの誰かしら」 「あの時は自分でもどうかしていたんだと思っています。いくら親の事があったとはいえ、あなたと関係を持った事だけは後悔していますから」
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