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「あの子の良さは、あなたみたいな女性には一生わからないですよ」
それだけ呟くと、USBとメモリースティックをスーツのジャケットのポケットに入れ、落とした鞄を拾って一歩だけ入っていた玄関を出る。
「しかし、この仕事をする者としてあなたの気持ちもわからなくもありません」
少しだけ振り返り見たその顔は、驚愕の表情をしていた。
まさか俺がこんな事を言うとは思っていなかったのだろう。返してくる言葉もない。
「ですが、あなたのしてしまった事はあまりにも酷すぎる」
半分に伏せた瞼の瞳に築島を写し、冷たい視線で捕らえる。
「…退職願、書いておいて下さいね。いつでも辞められるように」
そう言い放ち、玄関の扉をゆっくりと閉めた。
きっと築島の事だからまだ何かを言い返してくるだろうと覚悟をしていたが、扉を開ける様子もなく部屋の中は静まり返っている。
俺はそのままエレベーターに乗り、車を停めてあるコインパーキングまで駆け足で向かった。
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