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いつの間にこんなに暗くなっていたのか…… もう空はヘッドライトをつけないと走れないほどに暗い夜空になっている。 築島の家には感覚的に10分ほどしかいないと思っていたのに、時計を見ると30分は過ぎていたせいもあった。 定時に会社を出てこの家まで車で移動して約20分。 築島の家に30分以上を過ごし、今から会社に戻る事を考えると1時間以上は彼女の元を離れていることになる。 もう、帰ってしまったか…そうかまだ一人会社に残って頑張っているか… 琴の事だ。きっと今日は家に帰らないつもりで会社にいるだろう。 そう確信して、車を会社まで出来るだけ早く走らせた。 こんな時に引っかかる信号がさらに自身を苛立たせる。 首元を緩めようと強くネクタイを引っ張り気分を和らげようとしたが、こびり付いた築島の匂いが鼻先に充満し、ただ気分が悪くなるだけだった。
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