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「……ひっ、柊さん!」 開けた時に大きく鳴り響いた扉の音に驚いて、デスクに向かっていた身体を椅子ごとこちらに向け、俺の名前を呼んだのは一刻も早く逢いたかった彼女だった。 「すみません、遅くなりました。吉沢さんは?」 今すぐに駆け寄りたい気持ちを抑え、仕事中の自分の姿を必死に保つ。 誰もいないフロア全体を見渡しながら一歩ずつ琴に近づく俺の心臓は、早く彼女を喜ばせてあげたいせいかあり得ない速さで鼓動している。 「吉沢さんには帰ってもらいました。一緒に残ってくれるって言ってくれたんですけれど……」 近づくたびに彼女の顔ははっきりと見えてくる。 何度も擦ったのか目の周りの赤みが酷い…すぐにでもその瞼に触れて労わってあげたい。 でも、彼女の赤みは目の周りだけでなく、近寄って見た顔は頬まで赤くなっている。 頷きながら恥ずかしそうに俺を見上げると、琴は照れ臭そうにこう言った。
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