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「私…この匂い…知っているんです」 琴が俺の胸の辺りやネクタイ、そして首にと順番に触れていく。 匂い……? まだこの時は彼女の事ばかりが気がかりで全く頭が働かなかった。 だが、琴の次の一言で今のこの事態を気付かされる事になる。 「留美…いつも私の家に泊まりにきた時、このボディクリームをお風呂上りに塗っているから… その時の留美と同じ香りが柊さんからするんです…… 柊さん、築島さんと…何、…したの?」 気付いた時にはもう遅かった。 何度もこの匂いには打ちのめされていたのに、なぜ脱ぎ捨ててこなかったのかと、間抜けな自分を責めてももう遅い。 ずっと喜ばせたかった彼女は、もう酷く傷ついた顔をしていた。
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