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私の頬を包んでいる柊さんの手のひらは微かに震えている。 USBとメモリースティックをデスクの上に置いた柊さんは、両手で私の両肩を掴み、目線を合わせた。 「琴、待て。それは誤解だ」 そう言われて思いつくのは、一番想像したくない二人の姿…… だって「誤解だ」って言葉が出てくるのなら、そういう行為を柊さんも今この一瞬で想像したって事だ。 「だって……」 私は頭を大きく左右に振らすと、彼に身体を両手で強く押した。 「…信じて…」 ”信じてたのに” そう言おうとして言葉を詰まらせた。 築島さんの事だから、交換条件として柊さんにそういう行為を迫った場面を容易に想像出来る。 だって彼のご両親が亡くなった時、「そんな慰め方しか出来なかった」っと言っていた。 だから、私への嫌がらせで身体を重ねる事に対してきっと何の抵抗もない人だと思う。
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