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でも…じゃあ…… 「じゃあ、どうして?どうして、柊さんからそんな香りが漂ってくるんですか?」 「築島には…抱きつかれた。すぐに離れようとしたけれどなかなか離れなくて…… いや、……これは言い訳だ。俺に落ち度があったんだ。 嫌な思いをさせて本当にすまない。だから、何もなかったと証明するために、琴が気の済むまでこの身体を調べてくれていい」 「えっ?!あ、あのっ…ひ、柊さん!ストップ!止めて下さい!!」 柊さんは迷う事無くシャツのボタンを一つずつ外していく。 彼らしくない捨て身の行動に、私は慌てて駆け寄りその手を止めた。 その時視界に入ったのは、床に捨てられたままのジャケットとネクタイ。 落ちた瞬間に微かに残り香は舞ってこの空間を漂っていたけれど、もう今は何の香りもしてこない。 まるで、この役目は終わったと言われているように感じた。
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