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遠慮がちに私に触れてくる柊さんの手を背中に感じながら、彼の言葉が耳のすぐそばで聞こえてきた。 「…琴」 「はい」 「不安にさせてすまなかった。……許してくれるか?」 「許すも何も…柊さん、私の為に築島さんのところに行ってくれたんですよね」 スリッと頬ずりをした彼の胸からは、熱くて早い鼓動が聞こえてくる。 その鼓動を堪能した後、私は目一杯の笑顔で彼を見上げた。 「なのに、疑ったりして本当にごめんなさい。 そして、ありがとうございます。 USBもデータも全部戻って来て、私、本当に、本当に嬉しいっ……」 そのままの勢いで首に抱きつこうとしたら、体勢は一気に下へと落ちていった。 「きゃぁっ!」 脱力感からか、柊さんは全身の力が抜けてその場に座り込む。 彼に抱きついていた私も一緒にその場にしゃがむことになっていた。 そして、そのまま彼に力の限り抱き締めてもらった……
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