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「柊さ……」 名前を呼ぼうにも彼が抱き締めてくれる力が強すぎて、途中で呼ぶのを戸惑ってしまった。 だってこれ以上会話を続けても、きっとお互い謝り合いっこにきっとなる。 私は自分の不注意で彼をこんな目に合わせてしまった事に対して。 彼はそんな私を、これ以上傷付けないように嘘をついて出て行った事に対して…… 柊さんと築島さんがどんな会話をして、どんな状況で抱きつかれて、そしてどんな風に別れてきたのかは凄く気になる。 だけど…… だけど、ここにいる今の彼が全てだ。 こうして私の気持ちを伝えただけで、弱くて脆い彼の姿が見れる。 私なんかのために、こんなにも全てを曝け出してくれた事に、今心から愛情を感じている。 きっとこんな柊さんの姿を築島さんは見た事がないだろう。 私にしがみ付いて離さない彼の背中をさすりながら、首筋に優しくキスを落とした。
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