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「汚れちゃいましたね。クリーニングに出さないと…」 「いや、これは捨てる」 「えっ?!」 その言葉を言うなり、カフスはポケットに入れたものの適当にジャケットとネクタイは丸めてしまった。 そして空いた手でシャツのボタンを留めていく。 「す、捨てるって!もったいない!」 私の声は誰もいないフロアに響き渡るけれど、彼はそんな態度の私を見てフッと笑うだけだ。 「こんなもの、家に持ち帰りたくない。家に帰るのは琴と俺だけでいい」 あの人の残り香が付いていたものを家に入れたくないっという事なんだろうっとすぐに気付いた。 そしてそれは私への気遣いだってことも。 こんな彼の思いやりのある行動に、私はますます惹かれていく一方だ。
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