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でも、朗らかな気持ちになれたのはここまで。
留美の何気ない一言に、店の奥にあるテーブルを挟んで向かい合って座っていた私達の間に微妙な空気が広がった。
「あっ、そういえばね。築島さん、会社辞めるみたいですよ。
しかもお見合いするんですって!相手は享楽商店の重役さんだって言ってました」
「ちょ…留美、それ本当?!」
ガラステーブルの上に音をたててカクテルグラスを置いてしまった。
中のドリンク勢い余って零れてしまったけれど、そんなものも気にならないくらい驚いた。
「本当だよ、だって本人から聞いたもん。仲介は享楽商店の野田部長だって。
どおりで築島さん、最近よく秘書課の室長に呼ばれているなぁって思っていたんだよね。
この事を話していたんだって納得だよ」
一人納得している留美に私は複雑な表情を隠せない。
静かに隣に座っている湊さんを見たけれど、平然とした顔をしていた。
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