エピローグ

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覚悟はしていたけれど、こうして直で見ることで本当に彼のご両親はいないのだと現実を突きつけられて、涙が出そうになった。 涙が零れそうになるのを踏ん張って我慢する私を見て、湊さんは強く私の手を握ってくれた。 こんな風になる事はとっくに予想されていたんだろう。 何も言わず、ただずっと手を握ってくれていた。 そしてしばらくして湊さんは私に優しく声をかけてくれる。 「……大丈夫か?」 「…はい、大丈夫です。ごめんなさい。さぁ、張り切って磨いちゃいますね!」 明るく振舞う私を彼は少し困った顔で見ていたけれど、初めて会ったというのに泣き顔のままの私を湊さんのご両親に見せたくない。 優しく問いかけながら、敷地内の雑草や落ち葉を拾い、墓石を綺麗に磨き、たっぷりのかけ水をしてお花にお線香、ろうそくを順番に供え、両手を合わせて彼のご両親に挨拶をした。
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