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その瞳はとても切なげで、今度は私が彼の手を握り締めたくなった。
でもその前に湊さんが語りだした。
「多分、聞いても楽しくない話だったと思うぞ」
「どうしてですか?」
「俺は昔から親には懐かない子どもだったから。幼少期もあまり母親に甘えた記憶もない。だから、迷惑をかけた記憶しかないから……とてもじゃないが親孝行してきたとは言えないな」
「そんな事……」
「いや、本当なんだ。だから、あまり一緒に出かけた記憶もなくて…」
それから口ごもってしまった彼はご両親の事故当時の事を思い出しているんだろう。もう、何も言わなくなってしまった。
堪らず私は両手で湊さんの冷たくなってしまっている右手を取り、今度こそぎゅっと握り締めた。
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