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私の母親が相手だからか、私一人ならジロリとその鋭い眼差しで見つめられるはずなのに、今日に限っては小型犬が威嚇しているような目付きの彼。
……全然怖くない。
それでもさすがにお母さんも空気を読んだのか、静かに口を閉ざしてくれた。
「で、では仕切りなおしという事で…」
私がそう促すと、湊さんは私にしか聞こえない僅かなため息をつき、お父さんに向かって真剣な声色で語り始めた。
「今日はある了承を頂きに参りました」
お父さんの目を真っ直ぐに見つめ、一目も逸らさない湊さんとその目を見ようとしないお父さん。
こっちは冷や汗しか出てこない。
「こちらに伺ったときに申しましたとおり、琴音さんとは真剣にお付き合いをしております」
きっと彼の中では用意してきた言葉を選んで言っている程度にしか思っていないんだろうけれど、私にとっては何度聞いても嬉しい言葉。
にやける頬が止まらなくて俯いた。
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