プロポーズ編

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どうしようもない事で拗ねている自分は、まだまだ幼いっとわかっているけれど、それでも今すぐ機嫌を直せ。っというのは私には無理だった。 「琴とすぐにでも一緒に暮らしたかったから。だから、すまない事をしたと思っているけれど、どうか納得してほしい」 自分の分のワインを入れ終えた湊さんは、グラスを持っていない方の手で私の後頭部を撫でる。 彼からの言葉とこの行動に、勝手に顔も身体もまだワインは飲んでいないのに熱くなっていく。 嬉しくてしょうがないけれど、それでもまだ笑顔にはなれなかった。 「……そうか俺と結婚する気はなかったのか?」 湊さんはとんでもない事を言い出したから、私は慌てて顔を上げた。 「そ、そんな事思うわけありませんっ!!」 「じゃあ、納得してくれるな?」 フッと笑うその笑顔に、言い負かされたっ!っと気付く。 渋々頷いた私は、グラスを合わせずに乾杯をしてワインを口に含んだ。
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