プロポーズ編

39/92
前へ
/434ページ
次へ
(琴音side) 時計の針が6時になると、この会社の終業を知らせるベルが鳴る。 でも、私達”販売促進課”にそんなベルは無意味だ。 ベルの音よりも電話を知らせる音や、資料を作成するいくつものタイピングの音、そして打ち合わせで言い合っている声の方がはるかに耳に届いてくる。 その様子はもちろん私も一緒で、取引先とこれからのスケジュールを調整する打ち合わせの電話をしていたところだった。 「…はい、はい。あっ、そうですね。その日は…すみません、柊は予定が入っておりまして…はっ?私?私でもいいと? いえ、それは私一人ではとてもじゃないですが打ち合わせにはなりませんし…… へっ?打ち合わせではなく??」 ちなみにこの電話の相手は取引先の大手輸入食会社の営業部の30代のお坊ちゃま。 スケジュールの事で話があるというから忙しい合間をぬって電話をしたというのに、電話が繋がった途端お食事のお誘いの話になった。
/434ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5014人が本棚に入れています
本棚に追加