プロポーズ編

40/92
前へ
/434ページ
次へ
これ以上隣の人に聞かれないように電話口を手で隠してお断りの言葉をかけようとすると、長い腕が伸びてきて強引に受話器を取られてしまった。 「お電話代わりました、柊です。担当の私が席を外していて申し訳ありませんでした。 スケジュールに関しては、今から即メールにてファイルを添付するのでそちらをご確認の上、折り返し電話かメールを担当の私宛にお願いします。 では、お互いに忙しいと思いますのでこれで失礼いたします」 カチャ…っと丁寧に置かれた受話器。その丁寧さが静かな怒りを感じられてちょっと怖かった。 恐る恐る上を見上げると、打ち合わせ用のタブレットを片手で持ちながら私を見下ろす柊さんの姿がある。 会社では”湊さん”ではなく”柊さん”っと呼んでいる私。 でも、今の彼の瞳の色を見れば”湊さん”っとつい呼んでしまいそうになる。 だって思いっ切り”ヤキモチ”の感情が駄々漏れだったから。
/434ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5014人が本棚に入れています
本棚に追加