プロポーズ編

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その動きはとても素早いものだったけれど、私に見られては不味い代物なんだという事はさすがに気付いた。 「今、何を隠したんですか?」 「特に何も」 「嘘っ!今何か見えました!」 「そうですか」 「そ、そうですかって……」 開き直った湊さんは何食わぬ顔で玄関に立っている。 彼が隠した小さな紙袋は白い色をしていた。そして何かのブランドのロゴが見えたけれど、それが何なのかはわからない。 もしかして私に内緒で高級な物でも買ったんだろうか? でも、彼がそんなに隠してまで購入した物っていったい…… そう疑わしい目付きで湊さんをずっと見つめていると、彼はふうっとため息をついて一言こう言った。 「もう昼間だし今日は俺が食事を作るから着替えてきたらどうだ?」 「えっ?本当ですか?!」 久しぶりに食べる湊さんの手作りご飯。 一気に私の疑わしい目付きは喜びに輝いた。
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