プロポーズ編

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「ふふ、湊さんが座っていた席ってたしかここだったよね」 学校指定のスリッパを拝借していたから、スリッパの音を鳴らせて当事彼が座っていた椅子へと向かった。 湊さんが座っていた椅子は、私達図書委員のカウンターから真っ直ぐに見える本棚側の席。 カウンターからは離れているけれど、その距離が何度見ても不自然に感じる事がない、ちょうどいい距離だった。 だから何度も湊さんの横顔をチラッと見ては、一人で興奮していた事を思い出して笑ってしまった。 そしてあの時彼が座っていた椅子に私も座ってみた。 「湊さん、ここで本を読んでいたんだ……」 背もたれに背中を預けて前を見つめる。 目の前は窓があり、ちょうど風の通り道。こんな気持ちのいい場所を独占していたなんて…… 本好きの彼にはここは堪らない場所だったんだろうな。
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