プロポーズ編

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そして横を向くと一直線にカウンターがある。 「湊さん……ここから私の事、見ていてくれたんだよね」 以前、聞いた事があった。湊さんの初恋も私だったって。 この図書室で私を見かけた時から好きだったって。 「未だに信じられないけれど」 だってあの頃、そんな素振りは一切見せなかったんだ。湊さんは。 いつも同じ会話に同じ挨拶。 それで好意を寄せてもらっていたなんて分かるわけがない。 「でも、嬉しいよね。あそこに座っていた私を見つけてくれたんだもん」 椅子の脚の音を鳴らせて立ち上がり、ちゃんと元に戻してから向かったのは10年前の木曜日、私の居場所だったカウンター。 カウンターの上は文房具類が新しくなっただけで、図書カードも収納棚も何も変わっていなかった。
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