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トクトク……っと、初恋の頃のように可愛く鳴り続ける胸の音に手を当てながら深呼吸をしていると、音を立てずに図書室の扉が開いた。
まるで、10年前を再現しているみたい。
扉をスライドさせてここに来た湊さんが、あの時の同じように私を図書室の入り口から見下ろしていた。
「…………」
無言で驚いた私を見下ろす湊さんは、10年前とは背丈も服装も違うけれど視線は鋭さを保ちながらも穏やかに見つめてくれている。
……思えば、10年前も私がしっかりと見る心の余裕がなかっただけで、彼はこうして私の事を見つめてくれていたのかもしれない。
非常に惜しい事をしたなっと、今だからそう思える。
「変わらないな、琴は」
私が湊さんに見惚れていると、彼は静かに扉を閉めた。
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