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そして目を細めて笑うと、懐かしい言葉を彼は口にした。
「すみません。ある文庫本を探しているのですが」
突然改まった口調になって私に問いかけてきた。その目は悪戯っ子のような目をして、私は一瞬であの頃を再現しているのだと気付く。
「あはっ!
ふふっ……はい、どの本をお探しですか?」
「”アルジャーノンに花束を”なんですが」
「はい、少々お待ちください」
ここまで言い合って、お互いに吹き出してしまった。まさか湊さんがこんな事をしてくれるとは思わなくて、嬉しくて楽しくて緩む頬が止まらなかった。
「昔の琴はこんな風にスムーズに話せなかったのにな」
「もっとガチガチでした?」
「あぁ、ロボットみたいに口調も動きも硬かったな」
「もうっ、酷い!」
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