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涙で滲む視界からはとてもじゃないけれど湊さんの表情は分からなかった。
でも、今クスッと笑ってくれたから返事がまだ出来ない私に怒ってはいないはず。
今、伝えてくれた言葉を忘れないように何度も何度もリピートさせる。
だって何度でも思い出したい。
だって何度も聞きたいって思っていた言葉を、今こうして伝えてくれたんだから。
いつまでも返事をしない私に痺れを切らしたのか、左手を手の平に添えたまま私を下から覗き込んできた。
「指輪、受け取ってくれるか?」
私は、何度も小刻みに頷く。
「結婚も……してくれるか?」
「…………は、い」
何とか喉から振り絞って声を出した。この返事だけはちゃんと声に出して伝えたかったから。
「よかった……」
心底安堵した、湊さんの声が小さく図書室に響いた。
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