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左手の一部分だけがひやりとした感覚に襲われた。
その感覚に零れ落ちそうになっていた涙は一瞬止まったけれど、それはほんの一時だけで、今度は止まらずに私の頬を雫がいくつも伝っていく。
左手薬指には、湊さんがリングをはめてくれていた。
リングにビッシリとあしらわれた細かなダイアのリング。
地味な私には勿体無い位の華やかな婚約指輪だ。
「い、いつの間に……用意していたんですか?指輪…」
やっと振り絞って出来た会話がコレ。本当、自分でも色気がないと思う。
「店に行ったのは月曜日。本当は金曜日に間に合わせたかったんだが、店の都合でどうしても今日の朝にしか出来上がらないと言われて…」
「だから今朝から出かけていたんですか?」
「あぁ。まさか帰ってくるところが見つかるとは思わなくて、かなり焦った」
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