最終章

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深谷君が経つ日の朝、私はある土手までルックを連れて来ていた。 ここはこの街で一番電車が通り過ぎるのがよく見える場所。 幼い男の子を連れたお母さんが連れて来ているのをよく見ていたから間違いない。 今の時間は朝の7時30分。 澄んだ空気と空からは太陽が少し顔を出していて、心地のいい朝だった。 深谷君からは「出発の時間も早いし、何より見送られたら辛くなるから来なくていい」っと言われて駅まで行けなかったけれど…… 「でも、見送りはしたいもん」 ルックのリードをギュっと握り締め、電車が走る線路を遠くからずっと眺めている。 この時間にこんな所に来たことがなかったけれど、早朝のランニングをしてる人や私と同じように散歩をしてる人達は多かった。 そんな人達と挨拶を交わしていた時、散歩中に滅多に吠えないルックが大きな声をあげて遠吠えをした。
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